忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ヤマタノオロチを主題として島根県各地を旅してきましたが、古代製鉄を考えていく上で外せない、製鉄の神である金屋子の神を祀る総本山、「金屋子神社」にも足を運んできました。

kanayagojinjya12.jpg


金屋子の神とは、中国地方の「たたら師」を始めとして製鉄に関わる人々に広く信仰されている神で、男神とも女神とも云われる神です。しかし、一般的には女神とされるようです。

wikipediaの「金屋子神」から引用すると、


高天原から、雨乞いをしている村人に応えて、播磨国志相郡岩鍋(現在の兵庫県宍粟市千種町岩野邊)にまず天降った。しかし、自ら、元々西方に縁のある神であるとの理由で、白鷺に乗って、西方の出雲国能義郡黒田奥比田(現 金屋子神社の社地)の山林に着き、桂の木にて羽を休めていたところを宮司の祖先である安倍正重が発見し、長田兵部朝日長者が桂の木の横に神殿を建立したという(途中、吉備国中山にも立寄ったとの伝説がある)。各地で金屋子神は自ら村下(むらげ:鍛冶の技師長)となり、鍛冶の指導を行ったとされる。

金屋子神の特徴としては、
自分あるいは部下の村下が、麻につまづいて転んで死んだので麻を嫌うと言う。また、犬に追いかけられ、蔦に取り付いて登って逃れようとしたが、蔦が切れたので、落ち、犬に咬まれて死んだので、犬と蔦は嫌いとも言う。さらに、犬に追いかけられた時、みかんの木に登って、あるいは藤に掴って助かったので、みかんと藤は好むらしい。桂は神木。

死の穢れには無頓着どころか、むしろ好むとされ、たたら炉の周囲の柱に死体を下げることを村下達に指導したと言う。また、死骸を下げると、大量に鉄が取れるようになったとも。


死穢を厭わないなど、日本の神々の中では異色の存在のようです。
ご神木は桂の木であり、桂の木に降り立ったと言う神話を持ちますので、「たたら場」の側には必ず桂の木があったそうです。むしろ、桂の木の側に「たたら場」を造ったというのが正解でしょうか。
そういえば、今回の旅で訪ねた、菅谷たたら山内の高殿の側にも桂の木がありました。

sugayatatara39.jpg

左手の建物が「高殿」、右手が桂の木


さて、まずは現地の様子を。
船通山から107号線まで戻り、107号でやや北東へ移動。その後258号線を使って市原峠を越えて暫く行くと432号線に行き当たります。その先の山中に目的地である、「金屋子神社」があります。
kanayagojinjya01.jpg kanayagojinjya02.jpg
(左) 432号沿いを流れる黒田川を渡ったところに、神域を示す鳥居が有りました。
(右) 鳥居脇にある碑文

 この大鳥居は、この処から右約100メートルの旧道に建てられていたものを、神社社殿保存修理事業の一環として、昭和63年5月29日、この地に移したものです。
 明治の初め、日本一の鉄の守護神の御神徳を称え、大神に相応しい、日本一の石造りの鳥居を建立しようと、この里の岩屋谷の石を切り加工し、土のうを積んで組み立てた由、石柱はこの川を渡すことができず、2つに切って切って渡したと伝えられています。
 鳥居の高さ:七.三メートル
 鳥居の上の幅:一〇.六メートル
 鳥居の柱の円周:2.16メートル
  昭和六十三年十一月吉日
    金屋子神社
     宮司 安部正哉


其処から車を走らせる事数分で目的地である「金屋子神社」に到着します。
kanayagojinjya03.jpg

kanayagojinjya04.jpg kanayagojinjya05.jpg
kanayagojinjya07.jpg kanayagojinjya06.jpg
kanayagojinjya08.jpg kanayagojinjya09.jpg
参道には、各地から奉納された鉧(けら)が並べられています。
鳥居をくぐって直ぐのところに並べられているこれらの鉧(けら)は、大きさ数メートルに及ぶ物ばかりで中々壮観です。

参道から石段を登ると、いよいよ本殿です。
kanayagojinjya12.jpg

kanayagojinjya13.jpg kanayagojinjya15.jpg
拝殿と扁額

kanayagojinjya14.jpg
拝殿脇より本殿

kanayagojinjya16.jpg kanayagojinjya17.jpg
(左) 境内には、古い石製の扁額と思われるものが
(右) こちらの上にも鉧(けら)が

本殿へ上がる石段の脇に池があり、こちらにも何か祀られているようでした。
kanayagojinjya11.jpg kanayagojinjya10.jpg
案内板には、「金儲神社」とあります。

金儲神社の由来
 幼くして母をなくし、不具な父に養育され、父家運つたなくして他郷にいで、昭和九年九才 小学校四年生の時私 路頭に迷い金屋子神社の社務所先代宮司安部正法翁並びに 母堂キワ様に拾って戴き 養い子として預けられ通学の傍ら 神社や社務所の掃除の手伝いをしながら 色々教育を受け身に付けて 昭和十三年学校卒業迄大変お世話になったもので御座居ます。
 昭和十年頃の事 神社本殿掃除中偶然金屋子さんのお使いの白蛇様が三方に乗っておられ塵が溜っており此の池で白蛇様のからだと三方を洗いお清めして上げた事が有ります。
 以来私に神霊が通じ 霊威が出て来るようになり 金屋子さんを信仰して参りました。金屋子さんの御加護並びに 地区の 皆さん方のお蔭を受け 現在の梅林商会を設立する事が出来た次第で御座居ます。
 昔より 鉄山師の方々皆金屋子さんを信仰して金儲され 大財産家で旦那さんになっておられます。此の度の遷宮に当り金屋子さんの神霊により 金儲神社を造り献上すれば 金屋子神社と共に信仰する者は金が儲かり 金運が授かるとのお告げが有り 宮司さんに申し出て此の社を寄進させて戴きました次第で御座居ます。
 金の信者の神と書いて有ります。金屋子神社 金儲神社共に信仰すれば 金が儲かり金運が授かります。
 必ずやお守り下さるものと信じております。
  昭和六十年十一月五日
    当町 西比田
    (有)梅林商会
      代表者 梅林 幸雄


なんというか、直接的だなぁ・・・
他では、あまりみない案内板ですね。

kanayagojinjya18.jpg kanayagojinjya19.jpg
由緒にあった白蛇を祀られているようです。

さて、製鉄の神さまについて、金屋子の神は犬を嫌うようですね。
関西で山師の神といえば狩場明神が有名ですが、こちらは逆に白と黒の二頭の犬を共に連れているとされています。
ですので、犬と山師、治金を切り離しては考えにくいところもあります。
中国と関西と距離は近いのですが、案外違うものですね。
製鉄と犬といえば、「もののけ姫」が頭に浮かびますが、関西人である黒猫は初見のとき物語を全く知らなかったので、新しい鉱脈でも教えてくれるのかな、と勝手に勘ぐっていたりしました。
ご存知の通り、山犬の姫はそのような存在ではなかったのですが、今度は烏帽子と金屋子の神との関連性が意図したものなのかな、とも疑いを寄せるようになりました。
製鉄業を守護する女性であり、山犬に害されるキャラクター。
最も、金屋子の神は女神であるため女性を嫌うといい、現実の世界のたたら場には女性に関する様々な禁忌があったようです。
このように明確な違いとしてある訳で、果たして意図したものなのか、ただの視聴者の勘ぐりに過ぎないのか、宮崎駿監督のみが知る事でしょう。


<<関連エントリー>>
たたら吹き-島根県雲南市・菅谷たたら山内-

金屋子神社
場所:島根県安来市広瀬町西比田


より大きな地図で 黒猫による島根県妖怪・伝承地地図 を表示

拍手[2回]

PR
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass
Pictgram
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

 

上古の成り立ち

  • posted at:2011-10-13 20:44
  • written by:伝家
 ここは古代よりスサノオ神の所領であった。須佐之男神は古事記の解釈によると鋼の発明家であらせられる。その異母兄弟で金山姫、金山彦神があらせられ、その御子が金屋子神との言い伝えがある。そういった関係でたたら吹きが連綿と伝えられているのも得心が行くというものだ。「安来港誌」

RE:上古の成り立ち

  • posted at:2011-10-13 21:08
  • written by:黒猫
「安来港誌」は未見ですので、また機会を見て読んでおくようにします。
山陰地方の歴史は、まだまだ勉強不足ですのでいろいろ読み進めている途中なのです。
また、読まないといけない本が増えてしまいました^^

安来港誌

  • posted at:2011-10-26 08:51
  • written by:しゃおこー
「安来港誌」は国会図書館に所蔵されてます。関西館で取り寄せられると思いますが、取寄せ可能かの確認・申請だけでも関西館に足を運ばなければならず、まる一日潰れそうですw 但し、改訂版が荒本の大阪府立中央図書館に所蔵されているので、そちらを閲覧した方が速いかもしれません。

安来港誌

  • posted at:2011-10-26 09:29
  • written by:黒猫
>大阪府立中央図書館に所蔵
そうですね。これが一番賢そうです。
荒本までなら、行く気になれば車ですぐですので。

古代のシンボル

  • posted at:2013-10-03 19:02
  • written by:十神
 さすがスサノオノミコトが安来と名付けた片鱗が漂う地域ですね。

上古の古雅

  • posted at:2014-04-17 22:02
  • written by:山陰神話ロマン人
比田村には、金屋子神社がある。伊邪那美命が、迦具土の命を生み給うてから、病に罹られ吐物から金山毘古神、金山毘売命を生み給い、遂に神避り給うたことを「古事記」に記され、「日本書紀」には金山の意味を、枯れ悩みこし、悶熱懊悩因為吐の文字があるが、金屋子神社は、社号其の物が己に枯れ悩み児の意義を現し、加之金山毘古、金山毘売の二柱の神を併せて祭って居るところを見ても、女神終焉の地たることを想像される。(東比田小学校長辻勝太郎氏報)

プロフィール

HN:
黒猫
性別:
男性
趣味:
自己紹介:
妖怪と酒を愛する一男一女の父。
昨今、文献漁りも行っているが、昔の人の書が達筆すぎて苦心中

 

最新コメント

[10/26 NONAME]
[05/06 yucca]
[04/05 ローズ]
[01/09 エッさん]
[11/15 黒猫]

 

ブログ内検索

 

カウンター

 

バーコード

 

アクセス解析