紀伊半島において牛鬼は非常に有名な妖怪です。
私が子どものころに「まんが日本昔話」で見た「牛鬼」は三重県のお話ですし、他にもいろいろ残されています。
またそれ故「牛鬼」に因んだ名前を持つ滝や淵も非常に多いと聞きます。
その中でも、今回は和歌山県西牟婁郡すさみ町にある琴の滝に足を運んできました。
[3回]
まずは伝えられているお話の内容を「
和歌山県ふるさとアーカイブ」から。
琴の滝の牛鬼
出典:すさみ町誌下巻
発行:すさみ町
上戸川(こどがわ)の支流の広瀬谷にかかる琴の滝は、今でこそ周囲に広い道がめぐっていて明るく開けているが、昔はあたり一面に大きな樹木が生い茂り、昼でもうす暗い中にとうとうと滝水が落ち、深くよどんだ滝つぼに冷たい水をたたえていた。
この滝つぼに牛鬼というおそろしい動物が住んでいた。牛鬼というのは、人の影を食べる鬼である。影を食べられた人は、必ず間もなく死んでしまう。
ある日、ひとりのお百姓が滝の所へ草を刈りに行った。
突然、大きな牛鬼があらわれた。お百姓はびっくりして助けをよびながらけんめいに逃げたが、とうとう牛鬼に追いつかれ、影を食べられてしまった。気の毒に影を食べられたお百姓は死んでしまった。
村人は正月にはこの牛鬼に酒をもっていって供えた。すると牛鬼はたいそう喜んだそうだ。お酒が大好きな牛鬼は、お酒を持ってきてくれるような村人には影を食べるようなことはしなかったということだ。
出展:
和歌山県ふるさとアーカイブ>和歌山の民話>すさみ町:琴の滝の牛鬼
こちらへ行く日の前日、娘に「まんが日本昔話」に出ていた三重県の牛鬼の話やこの琴の滝に伝わるお話のほか、いろいろな牛鬼の話をして雰囲気を盛り上げていたところ、では話が伝わっているところへ行ってみようか!と声を掛けたところ怖がられて同行を断られてしまいました;;
牛鬼除けの呪い文句まで教えてあげたのに;;
よって、今回は家族が寝ている時間帯にひとりで現地に足を運んできました。
県道38号線を車で走らせて少し道を入っていった所にこちらの看板が。
**「琴の滝」へ散策に来られた方へ。**
お車は、遠慮なく琴の滝荘駐車場に、止めて下さい。
御手洗いは館内にございます。
つり橋を渡った庭も無料で開放しておりますので、休憩、昼食等にご利用下さい。
その他、お気軽にスタッフまで声をかけて下さいませ。
琴の滝荘
ということですので、遠慮なしに「琴の滝荘」さんの駐車場を利用させていただくことにしました。
左がその「琴の滝荘」。駐車場をお借りさせていただいてありがとうございました。
右が駐車場に立てられてあった周辺の簡素なマップ。
駐車場脇にも小祠が。
琴の滝に向かおうとするとこちらの案内板が目に入ってきました。
これより、琴の滝 参道につき喫煙 および、食事等はご遠慮願います。
滝までの所要時間は【往復】ゆっくり歩いて
◎遊歩道コース 約二時間
◎林道コース【道路】 約一時間半
※ 是非、挑戦してみてください。
地図で確認してみたところ、林道コースとはどうやら川沿いに歩いていくコースのようです。
それにしてもどちらのコースをとるにせよ、以外に時間がかかるようです。
家族のおき出す時間がありますので、林道コースを選択して早足で琴の滝に向かいだしました。
(左) 林道の様子。車道になっており、林業や山林を整備される方々が使用されているのでしょう。
(右) 足下には川が見えます。
基本的に一本道ですが、このように案内板がぽつぽつと立っています。
そして、ついに辿り着いた琴の滝近辺にあった案内図など
(左)
琴の滝遊歩道案内図
琴の滝を中心とする広瀬渓谷は岩尾根や崖地の多い特異な地形で、これに伴い、周辺の森林は多様性の植物群落となっており、ヒメシャラ、ホンシャクナゲ等の山地性植物が見られる一方、ハマクサギ、ハマセンダン、ヒロハコンロンカ等の沿岸性植物が自生しています。また、昆虫等の生物相も豊富です。
琴の滝はすさみ八景のひとつで、この地域は県自然環境保全地域の指定地です。
(右)
戦国武将の隠れ里 広瀬谷
琴の滝上流域は天正13年(1585)の秀吉紀州攻めにより居城を退いた市ノ瀬(上富田町)竜松山城主山本勝正康忠の一子熊之進(因幡)一族の隠れ里として知られている。
康忠は天正14年大和郡山からの帰途謀殺され、遺子因幡と家臣あわせて16名は各地を流浪、天正15年かつての盟友周参見氏の庇護のもと、広瀬谷一円を開拓し隠れ住んだ。江戸時代には山本氏は地士として認められ、周参見万福寺近くへ居を移し、屋号を御庵といった。しかし家臣は開拓地に残り明治迄主家に年貢を献じた。山本一族からは、初代周参見村長山本康一郎、太平洋戦争時の台湾馬公鎮守府司令長官山本弘毅海軍中将、元三井銀行頭取田中久兵衛等の人材が出ている。
広瀬谷の山中には、苔むした墓石群や石垣等が残されており、跡地は林道沿いにあり、現在地より約3.5km奥地である。
平成5年3月(平成11年改修) すさみ町教育委員会
どうやらさらに奥地に行った所に落ち延びてきた山本氏一族の隠れ里もあるようです。
牛鬼伝承と関わりがあるかどうかは分かりませんが、こちらはこちらで興味深い話です。
が、案内板を眺めていると、とある箇所に目がひきつけられました。
お!午鬼の滝ですと!牛鬼ではなく?
琴の滝の下流にめん滝、糸繰の滝、合戦河原の次にあるようです。
帰路に寄らなくてはならない場所ができてしまったようです。
さて、琴の滝のある場所にはこの案内板の場所から、もう少しだけ上流に上らなくてはならないようです。
遊歩道からこのロープをつたって登ります。
ロープを使用して登ったところから琴の滝を見た所。
実はこの時に何枚か写真を撮っていたのですが、その内の一枚に。
おお!オーブがあちらこちらに写りこんでいます。
一時代前だと心霊写真の仲間入りを果たしていたのかもしれません。
しかし、この写真の場合だと何が写りこんでいるのでしょうね?
別の写真には写っていないのでレンズの結露ではないでしょうし、虫ではありません。
滝が近いので水蒸気?
・・・あるいは本当に幽霊様ご一行?
琴の滝にあった小祠。
祭神不明なれど伝承が元にあるのであれば牛鬼でも祀られているのでしょうか?
小祠のすぐ脇からとった琴の滝。
この位置からでは滝の上部が見えにくいです。
そしてこちらが牛鬼が棲むと云われている滝壺。
ちなみにこの滝壺の魚をとることは今でも禁忌なのだとか。
足許を見るとややスペースがあり、降りていくことができそうです。
そこで滝壺間際まで行ってみることにしました。
こちらの方が良いアングルですね。
もし足を運ばれる方がいらっしゃいましたら、勇気を出して滝壺間際まで降りていかれるほうが良い光景を楽しむことが出来ると思います。
さて、琴の滝を楽しませていただきましたので、引き続いて案内板にあった午滝という場所も確認しておくことにします。
よって帰路は林道コースを通ることにします。
遊歩道とは異なり、このような土の道です。
まずはめん滝
続いて糸繰の滝
合戦河原
抜け穴
青苔の滝・・・
実は現地に行っていたときには、午滝が何番目にあるのかうろ覚えだったもので、この青苔の滝まで来て初めて行き過ぎたことに気がついた次第。
そこで慌てて引き返して、ようやく午鬼の滝に辿り着くことができました。
こんなにしっかりした案内板を見落としてしまっていたようです。
しかし、滝らしきものは見えますが、下流側からは流れが激しく、また川岸も崖になっているのでアプローチし辛い。
そこでこのようなロープの張られている所を恐る恐る移動し、滝の肩から覗き込んでみました。
滝の大きさは小さなもの。落差1~2m程でしょうか。
琴の滝に伝わる牛鬼の伝承とこちらの午鬼の滝の名前の由来に何らかの因果関係でもあるのでしょうか?
帰宅後調べてみましたが、名前の由来までは辿れず。
漢字から考えるのであれば、何か馬に由来するものではあると思うのですが・・・
今回は早朝でしたので尋ねに行くことは憚られましたが、またの機会にもっと普通の時間帯にでも来ることができれば「琴の滝荘」の方にでも聞いてみたいものですね。
琴の滝
場所:和歌山県西牟婁郡すさみ町周参見
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